ダーシャのブログ

ゆるゆる生きてていいじゃない

35周年記念企画

ケルト神の一人、オグミオス。召喚に応じ参上した。問おう。お前が私のマスターか。」

突如として僕の目の前に現れた男はそう言った。身体をすっぽりと覆い隠すローブに身を包み、左手には水晶のはまった木の杖、右手には禍々しい分厚い本を持っている。そいつは只者じゃないことは分かっていた。自分がしてしまった事の重大さも。そしてこの質問の答え方も知っていた。

「そうだオグミオス。僕が君のマスターだ。」

「お前は、何を求める。何を望む。気に入らなければ殺すことも私は厭わない。」

オグミオスと名乗った神は僕の目をじっと見つめてそう言った。目はとても大きくて、吸い込まれてしまいそうだ。僕は胸の高鳴りを感じながら、小さく息を吸い込んだ後に願いを口に出した。

「僕が彼女を作るための手助けをして欲しい。それだけだ。」

オグミオスは眉一つ動かない。首筋を嫌な汗が流れる。どのくらい経っただろうか。突然、オグミオスの口元が吊り上がった。そしてやつは言った。

「……ひゃっひゃっひゃっ。僕が君のマスターだ、だってよ。こっちがちょいと遊んでみたら、真剣な顔して演じてやんの。了解しました、ますたぁ。精一杯お手伝いさせていただきますぅ~。」

オグミオスは腹痛え、腹痛えと笑い続けている。僕はオグミオスを殺したくなった。

*

最近僕の家に変な居候が出来た。そいつは自分の事をオグミオスという神だと言った。

「やっと帰ったか。タクヤ……。」

「ああ、今日は図書館に行ってた。」

オグミオスは全裸で床に寝転がっている。その鍛え抜かれた体は美しく、ヨーロッパの彫刻によく似ていた。

鞄を置いて手を洗う。冷蔵庫から作り置きのタッパーを取り出し、夕食の準備を始める。テレビでニュースを見ているオグミオスに僕は話しかけた。

「なあ、オグミオス。なんでお前はいつも全裸なんだ。」

「どうした。急に。ここに越してきて最初からずっと全裸だっただろう。」

オグミオスは寝転がった状態から起き上がり、顔を僕の方に向けた。

「いや、ふと気になったんだ。お前も召喚時はそれっぽい服装をしていたからな。」

「そんなことか。好きだから全裸でいるだけだ。」

「全裸が好きなのかよ。変な神様だな。」

「服なんて、着たい奴が着ればいいんだ。強制されるものではない。神様の中には、全裸で生活している神も結構いるぞ。」

「マジかよ。今凄い神様のイメージ変わった。」

「イメージなんて人が勝手に作り上げてるだけだろう。神からすれば服なんて逆に煩わしいものだ。実際、部屋では全裸の裸族とかいう人間もいるそうじゃないか。」

言われてみれば確かにそうだ。神という人間を超越した存在にとって服は邪魔でしかないのかもしれない。

「なるほどな。」

「どうだ。一緒に全裸を楽しまないか。」

「それも良いな。よし!」

そういって僕は服を脱いだ。なんとも言えない恥ずかしさもあったが、素晴らしい解放感に僕は包まれた。

「全裸ってなかなか良いものだな。」

「そうだろう。そうだろう。」

オグミオスはとても嬉しそうであった。